2007年5月11日金曜日

書評 ITポートフォリオ戦略論

なかなか、「これがバイブルだ」、といえるような本が見つからないIT投資論の分野の本です。読んだ中では、非常によくまとまっており、MBA本の戦略論のようにスマートで、理解しやすい本です。自分の専門でもあり、興味を持って読めました。

大きく分けて、4つのことを論じています、①ITポートフォリオ(いわゆるMITモデル)、②ITインフラ投資、③IT投資判断とその評価、④IT投資による価値創造の原則論 になっています。

ITポートフォリオでは、いわゆるMITモデルにより、IT投資を戦略投資、情報投資、業務投資、インフラ投資に分類して管理することが書かれており、それをもとに、事業部制組織がどのようなポートフォリオモデルを持つべきか、事業戦略とポートフォリオをどう関連付けるか(差別化戦略は、戦略投資を多めに、など)、業種ごとにポートフォリオをはどのような傾向になるかなどが説明されています。リスクとリターンの最適化においても述べられていて、景気が良いときは、インフラ投資や戦略投資の割合を増やし中長期的な視点を持ち、景気後退期は業務投資を増やして、コスト削減につとめるべきとのことがあり、至極納得ができます。

ITインフラ投資では、4つの投資の中でも最も判断が難しいと思われるインフラ投資にスポットを当てています。インフラ投資を考える際のリーチとレンジの概念、インフラ投資の戦略性、中長期的な視点が必要であるために、原則によるマネージメントなどです。

IT投資判断とその評価では、ポートフォリオごとによる投資判断とその評価方法が論じられています。リターンを、確定しているベネフィット、想定されるベネフィット、計測できないベネフィットに分けてかんがえ、たとえば業務投資では確定ベネフィットの割合が高いので、投資判断は行いやすいが、インフラ投資では、想定ベネフィットと計測不可ベネフィットが高く、投資判断基準はDCFだけではなく、定性評価も盛り込んだものにする必要がある、事などです。

ITによる価値創造の方法論では、ビジネス原則とIT原則を対応させることの重要性や、価値変換システムとして、経営幹部のITへの積極的な関与や、社内政治の少なさなどをあげています。またITポートフォリオによってリスク・リターンを管理して、ビジネス価値を管理することも明記されています。

以上、まとめると値段分のリターンは確実に得られる本だと思います。IT投資の意思決定を行っている人や、IT業界で営業をしている人には一冊もっていると役立つと思います。ただし、非常によく概念的にまとまっている分、実例など具体性が低いので、それらは日経のIT専門誌などを用いて補う必要があると考えてます。

0 件のコメント: